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zoom RSS 「実務の視点」について2 確定後根抵当権の相続における持分記載

<<   作成日時 : 2014/08/05 00:00   >>

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前回のつづきです

「登記研究」誌(テイハン)の連載「実務の視点」は
大変有意義な企画ですが,
実務家,指導機関,受験生には
その取扱いに細心の注意が求められるものと考えます

どういうことか。

ごく大雑把にいうと,
検討・解説の加え方にムラがあるのです

また,「現在でも通用する質疑応答を厳選している」
建前になっているのですが,
疑問符が付くような質疑もちょくちょく混じっているのです

一例を挙げましょう。

登記研究794号(平成26年4月号)の
「実務の視点」60回では,

元本確定後の根抵当権について,
相続を原因とする移転の登記を申請する場合に,
相続人が数人あるときは,
その相続分をも記載すべき

という趣旨の同454号の質疑応答を採り上げ,
元本確定後は債権額が確定するが,「登記手続上」,
確定債権額を登記事項とする規定がないことを理由として
「相続分を記載して,
各自が有する債権額の割合を公示することになる。」
と説明しています

そうでしょうか。

私は,これは「登記手続上」の問題ではなく,
実体規定である民法398条の14第1項本文の解釈の問題であり,
上記質疑応答の妥当性は失われていると考えます

確かに,かつては上記質疑応答と
同様の見解に立つと思われる有力な文献もありました
(新訂書式精義中(二)p1697,新不動産登記書式解説(二)p681)。

しかし,その後,
平成16年の新不登法制定に伴い発刊された
河合芳光著「逐条不動産登記令」p39では,
民法398条の14第1項本文は元本確定の前後を問わず適用され,
したがって,「根抵当権については,元本確定後であっても,
持分が申請情報の内容となることはない」
ことが明らかにされています

持分が登記事項となるのは
不登法59条4号の規定によるものであり,
相続を原因とする権利の移転の登記において
相続分を持分として申請情報の内容とするのは,
共同相続における相続分が相続財産を構成する各権利にも及び,
それらの権利がそれぞれ相続分を反映した持分割合で
共有されていると見ることができるからです。

そうだとして,確定後の根抵当権についても
民法398条の14第1項本文の適用があるとすれば,
被担保債権の相続によって根抵当権の共有状態が生じたとしても,
根抵当権持分の量的割合を観念することはできず,
元本確定前と同様,
持分(及び相続分)は登記事項とはならないのではないでしょうか。

民法398条の14第1項本文は,
「根抵当権の共有者は,
それぞれの債権額の割合に応じて弁済を受ける。」として,
共有割合が配当に至るまで定まらないことを示唆し,
元本確定の前後を問うていません

この条文を素直に読む限り,
元本確定後適用説には妥当性があると考えられますし,
そもそも,根抵当法の立法担当者もそのように考えていたようです
(貞家克己・清水湛著「新根抵当法」p215)。

相続を原因とする権利の移転登記を申請する際には,
戸籍謄本等を登記原因証明情報として提供する必要があり,
そこから相続分は容易に明らかになるので,
「相続分を申請情報に入れてください。」
と法務局からいわれたところで,この事例に限れば,
実務上は大きな問題とはならないのかもしれません。

しかし,仮に上記の質疑応答が現在も活きているとすれば,
その背景には,元本確定後の根抵当権には
民法398条の14第1項本文の不適用という解釈があることになり,
もしそうなら,他の登記手続に影響を及ぼしかねない
大問題となるのではないでしょうか

「実務の視点」は逐次単行本化されていますので,
上記質疑応答に関する記載は,
その際に改められるかもしれませんが。

長年の疑問が氷解するような深い解説がある一方で,
首をひねってしまう記載も散見されるので,
油断できないのが連載「実務の視点」というわけです

既に8000近く積み上げられた膨大な質疑応答を分類し,
1個1個の死活を判断し,
解説を加える作業が困難を極めることは察して余りあります。

しかしながら,若い司法書士が
「実務の視点」の記載を頼りに行った申請が却下されたり,
「実務の視点」の解説によって,
登記実務の学習者の理解に混乱が生じたりしたら,悲劇です

質疑応答が登記実務の円滑遂行を,
却って阻害する結果を招きかねません。

また反対に,
「実務の視点」の記載を誰も信用しなくなったら,
せっかくの好企画が台無しです

「実務の視点」執筆者の皆様には,
登記実務に与える絶大な影響力を考慮して,
ぜひ慎重なご検討をお願い申し上げます

また,司法書士の皆様には,
「登記研究」誌に書かれているからと,
その権威に寄りかかることなく,
積極的に疑義を指摘して議論を盛り上げていただけるよう
ご期待申し上げます。
 

筒井一光

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