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zoom RSS 最終の相続人が一人になる場合における遺産分割について4:正橋史人さん

<<   作成日時 : 2014/10/15 00:00   >>

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以前、
最終の相続人が一人になる場合における遺産分割について1」から
「最終の相続人が一人になる場合における遺産分割について3」として、
2014年1月13日から 2014年1月15日まで、
記事にしていた記事について、
進展があったので、改めて記事にしたいと思います


まず、

この件について、
「遺言・遺産分割等と不動産登記をめぐる諸問題」(下の5)という、
雑誌「登記研究」内の記事
(寄稿者:藤原民事法研究所代表「藤原勇喜」氏)において、
新たに次のような言及がありました
(以下の部分:「登記研究」平成26年4月号(794号)より引用、下線筆者)
----------------------------------------------
もっとも、たとえば不動産の所有者甲が亡くなり、
その妻乙及びその子丙が共同相続人となったが、
遺産分割前にさらに乙が亡くなり、
丙が乙の相続人となったというような場合
は、
甲の相続人たる地位が丙のみに帰属した以上、
遺産分割協議によって乙の存命中の遺産共有を
遡及的に解消することができなくなるので、
まず、乙丙の各2分の1の割合による共同相続登記をしたうえで、
乙の持分を丙に移転する登記をする必要があると解されます。

この場合、丙が「甲の相続人」兼「甲の相続人である乙の相続人」として、
丙自らが甲の所有していた不動産を承継する旨を決定すれば、
遺産分割の遡及効により(民法909条本文)、
甲から丙への所有権移転登記ができないかということが問題となりますが、
甲の相続人たる地位が一人に帰属した以上、
協議によって乙の存命中の遺産共有を
遡及的に解消することはできなくなりますので、
甲から丙への所有権移転登記は、
中間省略登記になるということになりそうです。

---------------------------------------------------
藤原勇喜氏は、以前、登記研究765号(平成23年11月号)の
論文を書いた方でもあります
(「物権変動原因の公示と登記原因証明情報」という記事でした)。
 
以前までの記事ですと、
ここまで具体的な事例に踏み込んでおらず、
かつ、具体的に説明もしていなかったのですが、
この記事をもって、はじめて
「最終の相続人が一人になる場合における遺産分割」を
否定する理由について、
「具体的」かつ「理論的」に説明がされました

もちろん、これを読んだ時点でがっかりしたのですが、
藤原勇喜氏の個人的な見解に過ぎないですし、
また、権威はあるといっても、
雑誌の中の論稿の一部分に過ぎませんので、
あえて改めて記事にはしませんでした。

そんななか、最近、裁判所の地裁の裁判例として、
次の判決がアップされました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84478
結論としては、ほぼ藤原勇喜氏の論文の結論のとおり、
となっております
(持分が同一人に帰属している以上、遺産分割の余地はない)。

司法書士の内藤卓先生の次の記事にもあるように、
「遺産処分決定書」の記載方法には若干の疑問の余地はありますが、
判決10頁で「改めて自己に帰属させる旨の意思表示
(遺産処分決定ないし遺産分割協議)を観念する余地はなく」
などとも言及しているので、
「甲相続人兼 甲相続人乙の相続人 丙」として、
遺産分割決定をしても同じ結論が出たように思えます
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/36981b87bd4c6bcf426ae8611cbf64b9

(ちなみに、通常は次のように書くと思われます(ページの一番下:本ページの一番下にも書き加えました
http://next-stage.at.webry.info/201401/article_12.html )

さて、この件については地裁レベルではありますが、
一応裁判例という結論が出てしまいました。

もっとも、結論が、単に雑誌の記事にある結論を踏襲しただけであり、
被告を勝訴させるだけの結論ありきのように思えますが、
実体上の理屈も一応通っています。

しかし、やはりどうしても納得できないのが、
「いままで、できていたことが突然できなくなったこと」です

不動産登記制度は、
権利変動の過程を忠実に登記簿に反映させることを原則としており、
権利変動の過程を省略する
いわゆる中間省略登記は原則として認められていません。

従前の実務上は、
「実体上、遺産分割する地位は承継するし、
同一人に帰属しても並存しうる」という立場で進めていましたし、
それにより遺産分割の遡及効が生じるからこそ、
これを「中間省略登記」などと考えたこともありません
(第二相続だけを相続放棄する可能性だってあるんだぜ)

しかし、平成17年の不動産登記法の改正(17年施行)の際に
「登記原因証明情報の原則添付」を法定し、
中間省略登記の禁止を推し進めた中で、
「中間省略登記らしきもの」について、
過剰に禁止している傾向があり、
今回の問題もそのことにより発生したのも思えます

カウンター相談の解説などを見ても、
登記研究の寄稿者のレベルの段階で、
「中間省略登記」とは何かが定義できていないという問題があります

例えば、登記研究759号(平成23年5月号)の
カウンター相談224の解説では、
数次相続発生した事案について、
一定の要件を満たす場合は中間省略登記が認められるが、
本件はその場合ではないため中間省略登記が認められない、
というような論法を取っています。

そして、
「不動産登記制度は、権利変動の過程を
忠実に登記簿に反映させることを原則としている」のでれば、
中間省略登記は、
「権利変動の過程が忠実に登記簿に反映されていない場合の登記」
と考えるのが自然ですが、
数次相続発生した事案で「中間の相続人が一人だけ」となる場合は、
「年月日B相続、年月日相続」と書きます

これは、原因を見ることによって、
「権利変動の過程を忠実に登記簿に反映」できているわけで、
厳密に言うと中間省略ではありません(まあ、住所を省略しており、
中間者の特定性がとれないといえばとれませんが)。

確かに、伝統的に上記についても
「中間省略登記」と呼ぶこともあるでしょうし、
受験指導校でもそのように呼ぶかもしれませんが、
純粋な中間省略登記との間に「違い」があるのは明確であり、

「そもそも純粋な中間省略登記に当たらない」
として処理していた事案を、
「ある一定の要件にあたらないから中間省略できない」として、
違うレベルの問題に当てはめて禁止したように感じます。
 

判決文8頁 には次のような被告の主張があります、
(以下判決より引用)
「東京司法書士会三多摩支会(以下「三多摩支会」という。)の実務協議会決議集の記載部分(甲5〔14ないし16頁〕)を引用して,本件事案のような事例については,遺産処分決定書等による相続登記を認める取扱いが長年の慣行であった旨主張する。しかしながら,仮に,東京法務局ないしその支局が,三多摩支会の上記取扱いについて,過去に何らかの見解を示していたとしても,登記実務を拘束するものではなく,その前提となる実体法上の法解釈に影響を及ぼすものではない。」

こういわれちゃうと、本当に困るのですが、
いかんせん従前より司法書士が遺産分割決定書を用いて
登記実務を行ってきたということを証明する手段はありません
(法務局の添付書類を掘り出してくることは不可能に近い)
(そしてその時点で訴訟では負けるのでしょうが)が、
上記に書いた「実体上、遺産分割する地位は承継するし、
同一人に帰属しても並存しうる」という立場で
登記申請を行っていましたのは間違いありません。
数の把握はできませんが、
多くの司法書士がそのような実体上の判断を行い、
そもそも中間省略登記に当たる場合ではないとして、
実務を行っていたはずです

本事例の、実体上の具体的な解釈が、
ある程度の権威のある書籍に、
初めてでたのは平成26年4月号(794号)の「登記研究」です。

それ以前に結論のみを出したカウンター相談などでは、そのような説明が
ないことから、問題の所在を間違えて、実体上の問題を考えずに、
かつ、実務的な法的安定性などを考えず、
「中間省略登記らしきもの」を「中間省略登記にあたる」として、
早とちりで禁止してしまったとしか思えません。

問題の所在を間違えて、
登記研究に記事にして、結論だけをだした上に、
後々それに気がついて、
実体上の解釈を変更したくせに、
よくもまあこんなことがいえるなとあきれてしまいます
(こちらも推測ですが)。


結局、地裁レベルの個別的な判決であり、
実務的な取り扱いが確定したわけではありませんので、
この取り扱い、
もし実務的に実体上の解釈を変えたのなら、変更されたのならされたなりに、
先例などで確定的に決めてくれ(事前に)!

そうしないと納得できん!

と思います(被告の主張などで明白ですけどね)。

こんなことをされると、実務の現場における法的安定性が保てず、
国民の生活に多大な悪影響があります。
なにより、法務局や国家に対する信頼を保つことができなくなります。


訴訟を提起した方は、
どこのどなたかは存じませんが、お疲れ様です


正橋史人




一応、通常はこのような遺産分割決定書を使っている(た)という文例を書いておきます。
----------------------------------------------------------------

    遺 産 分 割 決 定 書

最後の住所   東京都何区何町何丁目何番何号  
被相続人        A   (最後の本籍  東京都何区何町何番地 平成25年9月1日死亡)

最後の住所    東京都何区何町何丁目何番何号  
相続人兼被相続人  B    (最後の本籍  東京都何区何町何番地 平成25年10月1日死亡)

被相続人Aの遺産につき、
Cは、A相続人兼A相続人Bの相続人として、
次のとおり分割することを決定しました。

相続人Cが、下記の不動産を相続することとします。

1.渋谷区根来須戸町一丁目2番3号   宅地 45.67平方メートル

平成25年12月28日

東京都何区何町何丁目何番何号
 A相続人兼 A相続人Bの相続人     C  実印    

※Cの印鑑証明書を添付する

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