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zoom RSS 「相続分の譲渡」と「相続分の相続」・・・どれ程の違いがあると言うのか。:蛭町浩先生

<<   作成日時 : 2014/10/18 00:00   >>

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正橋史人司法書士の
「最終の相続人が一人になる場合における遺産分割について」
の1から4までの記事を大変興味深く読んだ。

正橋司法書士が指摘する通り、
これまでの登記実務は、遺産分割する地位の併有を認め、
遺産分割の決定によってCの単有登記を認めて来たはずであり、
その取扱いを否定する裁判例の出現は、
法的安定性の観点から見過ごすことができない問題となっている。

私見も正橋司法書士の説に大いに与するものであるが、
その反面、Cの遺産処分決定の可否を論ずるまでもなく、
解決されるべき問題のように思えて仕方がない。

我が国の不動産登記は、
権利変動の過程を忠実に登記に反映するため、
「中間省略登記禁止の原則」が採られている。

これは、我が国の不動産登記に公信力がないため、
登記簿を、遡っての権利調査を可能とする公簿とするための工夫である。

例えば、甲土地の所有権登記名義人であるAが3月26日に死亡すれば、
被相続人をAとする相続が開始し(民882),
相続人である配偶者Bと子Cは,
相続開始の時から,
被相続人Aの財産に属した一切の権利義務を包括承継し(民896)、
被相続人Aの相続財産である甲土地は
被相続人Aから相続人BCに各2分の1の割合で移転する(民898)。

その後、6月26日にBCが相続財産である甲土地を
Cが単独で相続する旨の遺産分割協議(民907T)を行えば、
遺産分割による遡及効により
始めからCが単独相続したことになり(民909本文)、
先例は、共同相続登記がされていない限り、
Cを単独所有者とする3月26日相続を原因とする
移転登記を申請することができるとしている
(明44.10.30民刑第904号民刑局長回答、
昭19.10.19民甲第692民事局長通達)。

同様の事例で、
3月26日の亡Aの第1相続後の6月26日に相続人Bが相続人Cに対して、
「相続分の譲渡(売買又は贈与)」をしたとすれば、
先例は、共同相続登記がされていない限り、
Cを単独所有者とする3月26日相続を原因とする
移転登記を申請することを認めている
(昭59.10.15民三第5196号民事局第三課長回答)。

「相続分の譲渡」は、
民法905条の相続分の譲渡の取戻の規定を根拠に認められており、
積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する
譲渡人の割合的な持分を譲受人に移転させる制度である
(最判平13.7.10判時1762・110、判タ1070・258、登研645・127)。

「相続分の譲渡」については、
遺産分割のような遡及効の規定は存在しないが、
解釈上、遡及効を認め
(田中康久「新訂民事訴訟と不動産登記一問一答」
青山正明編著(テイハン)p317〜318)、
上記のとおり相続後の「相続分の譲渡」についても、
遺産分割と同様の取扱いがされている。

これに対して、同様の事例で、
3月26日の亡Aの第1相続後の6月26日に相続人Bが死亡した場合、
亡Bの相続がBの死亡により開始し(民882),
相続人Cは,相続開始の時から,
被相続人Bの財産に属した一切の権利義務を承継する(民896)。

被相続人Bの相続財産のうち亡Aの相続人Bの相続分に着目すれば、
第2相続の現象は、Bの「相続分の相続」となる。

この「相続分の相続」と「相続分の譲渡」とでは、
相続分の移転原因が相続か売買(贈与)かの違いはあるものの、
その法律効果は、登記処理に影響を与える要素について、
何ら変わるものではなく、亡Aの相続人Bの死亡により、
第1相続である亡Aの遺産については、
相続人Cがその全部を取得することになり、
裁判例に従えば、遺産分割の余地はなくなる。

この点は、「相続分の譲渡」でも同様である。

したがって、「相続分の相続」も亡Aの第1相続について、
初めから相続人Cが単独相続したと解したところで、
何の問題もないと言わざるを得ない。

何らかの問題があるのであれば、
「相続分の譲渡」についてもわざわざ解釈で遡及効を認め、
亡Aの第1相続について、
初めから相続人Cが単独相続したと判断することは
できないことになるはずだからである。

それにも係わらず、
相続分の特定承継に当たる「相続分の譲渡」では、
亡Aの相続財産である甲土地について、
あたかも相続人Cが単独相続したかのような登記を認めるのに対し、
相続分の包括承継に当たる「相続分の相続」の場合には、
亡Aの相続財産である甲土地について、
3月26日相続原因とする相続人BCのための
共同相続による移転登記を申請し、
その後に亡Bの相続財産である甲土地のB持分について
6月26日相続を原因とする相続人Cのための
B持分の移転登記を申請しなければならないというのでは、
明らかに均衡を失しているように思われる。

仮に、この「相続分の譲渡」と「相続分の相続」の取扱いの違いを、
遡及効の有無に求めているとすれば、
その取扱いは余りに形式論に過ぎるのではなかろうか。

確かに相続には遡及効の規定はない。

しかし、亡Bの第2相続の開始により、
それとの関係で、亡Aの第1相続は、
その権利義務の全部を相続人Cが単独相続し、
亡Aの第1相続の相続財産の帰属が確定するため、
相続財産の帰属を確定するための遺産分割制度の法意に照らし、
亡Aの第1相続については、
初めから相続人Cが単独相続したものと
解すことが可能であるように思われる。

とすれば、「相続分の相続」の場合も、
「相続分の譲渡」があった場合と同様に、
Cを単独所有者とする3月26日相続を原因とする
移転登記を申請することを認めてよいことになる。

この考え方によれば、
亡B及び原告Cが,亡Aの遺産である本件各共有持分を
遺産共有の状態で取得したこと及び亡Bが、
原告Cとの間において,
亡Aの遺産に係る遺産分割をしないままに死亡し,
亡Bの相続人が原告Cのみであった事実が
本件登記原因証明情報によって証明されていると認定できる以上、
Cが遺産処分の決定ができるか否かを問うまでもなく、
原告Cの申請は、登記原因証明情報を提供した申請として適法となり、
登記官の判断は違法となるのではなかろうか。

正橋司法書士が指摘するとおり、
何が中間省略登記なのか、
何が数次相続先例(昭30.12.16民甲第2670号民事局長通達:
飛沢隆志「不動産登記先例百選第二版」p54(有斐閣))
のように所有権移転の申請方式の問題なのか、
ややあいまいに議論がなされていることに
起因する問題なのだと思われるが、
できるだけ早期に実務解釈の指針となる先例を示し、
混乱の波が不必要に広がるのを防いで頂きたいものである。


蛭町浩

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