Next-Stage

アクセスカウンタ

zoom RSS 根本から考え直してみる・・「中間省略登記禁止の厳格性」:蛭町 浩先生

<<   作成日時 : 2014/11/07 00:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 32 / トラックバック 0 / コメント 0

我が国の不動産登記は、
民法177条により権利変動そのものが登記の対象とされている。

また、公信力が認められていないため、
不動産登記制度は、発生した権利変動を
発生順に全部登記することを原則としている。

これにより、遡っての調査を可能とするための
公簿として登記簿を位置付け、
中間省略登記禁止の原則を導いている。

そのため、甲土地がA→B→Cと順次に売買され、
ABC3者の合意があったとしてもAからCへの直接の移転登記は、
中間省略登記に該当し許されない。A→Cの登記を認めれば、
現在の登記名義人Cの所有権が
BC間の取引及びAB間の取引の結果であり、
Cとの間で確実な取引をするためにAB間の取引、
BC間の取引を調査すべきことを登記簿から知ることができず、
権利調査に支障が生ずるからである。

このように我が国の登記制度が公信力を採用していない以上、
現在の権利関係に至るまでの過去の権利変動が、
「誰と誰との間のどのような原因による権利変動」なのかを
登記簿から知ることができるようにし、
権利調査の端緒を与えることが
中間省略登記禁止原則の趣旨ということになる。
 
相続による権利変動は、
相続開始後に生ずる法律関係を介して
相続財産の最終帰属や暫定帰属が決定される「特殊性」があり、
その過程をどの程度「厳格」に登記に反映すべきなのか、
明治以来の登記実務の取扱いとの「整合性」を含めて考える必要があり、
売買などの特定承継とは異なる問題を含むものとなっている。

そこで、登記先例をもとに相続の登記における
中間省略登記禁止の厳格性を再考してみることにする。


(1) 相続開始後、遡及効の有る法律関係が生じた場合の登記処理
甲土地の所有権登記名義人Aが3月26日に死亡し、
その相続人が配偶者B、子Cである場合、
その後の6月26日にBCが遺産分割協議をしてCを単有とすれば、
厳密には、@Aの死亡により甲土地がAからBCに移転し、
BCが遺産共有する権利変動が生じ、
Aその後の遺産分割により甲土地が
Cの単有となる権利変動が生じているため、
甲土地の権利変動は2段階で生じ、
これに対応して2個の登記を考えるべきことになる。

しかし、先例は、
「3月26日相続」を原因として直接AからCへの移転登記を認めている
(明44.10.30民刑第904号民刑局長回答、昭19.10.19民甲第692民事局長通達)。

この取扱いは、
@遺産分割の遡及効(民909)により
実体上Cが初めから甲土地を単独相続することが擬制され、
必ずしも中間省略登記という必要がなく、
A亡Aの相続の最終権利帰属者Cを公示すれば、
Cには所有者として甲土地が
自己に帰属していることを明らかにすることに利益があるため、
Cを調査することで、遡っての権利調査に支障を来さない
との評価ができることによるものと思われる。

また、3月26日のAの死亡後、
6月26日にBが相続放棄の申述をした場合、
@Aの死亡により甲土地がAからBCに移転する権利変動が生じ、
Aその後のBの相続放棄の申述により
甲土地がCの単有となる権利変動が生じており(民939)、
甲土地の権利変動は2段階であるが、
先例は、「3月26日相続」を原因として直接AからCへの移転登記を認めている
(明44.10.30民刑904民刑局長回答、昭53.3.15民三1524民三課長依命回答)。

これも上記の遺産分割と同様の
評価がなされての処理と推測できることになる。


(2)  相続開始後、遡及効の無い法律関係が生じた場合の登記処理
3月26日のAの死亡後、
6月26日に相続人Bが他の相続人Cに対して
相続分を譲渡(売買又は贈与)した場合、
@Aの死亡により甲土地がAからBCに移転する権利変動が生じ、
Aその後のBの相続分の譲渡により、遺産分割をするまでもなく、
甲土地がCの単有となる権利変動が生じており(民939)、
甲土地の権利変動は2段階であるが、
先例は、「3月26日相続」を原因として
直接AからCへの移転登記を認めている
(昭59.10.15民三第5196号民事局第三課長回答)。

相続分の譲渡には、遡及効は規定されておらず、
遡及効は認められないため
(監修七戸克彦、編集日本司法書士会連合会等
「条解 不動産登記法」p429(弘文堂))、
この先例は、上記(1)@のように遡及効により
実体上Cが甲土地を単独相続したとして
中間省略登記に該当しないとする評価はできず、
A亡Aの相続の最終権利帰属者Cを公示すれば、
Cは所有者として甲土地が
自己に帰属していることを明らかにすることに利益があるため、
遡っての権利調査に支障を来さないとの評価のみで
例外処理を認めたものと考えるしかないことになる。

これら(1)(2)の先例を整合的に解釈するとすれば、
登記実務では、亡Aの相続について、
共同相続登記がされない間に、
相続財産の帰属に関する法律関係が発生した場合、
その中間過程を公示するまでもなく、
最終的な財産帰属者を公示できれば足りるとして
相続の登記の中間省略登記禁止の厳格性を考えている
という結論が得られることになろう。


(3) 数次相続の場合の登記処理
さて、事例を変えて、
甲土地の所有権登記名義人Aが3月26日に死亡し、
その相続人が子BCであり、
その後の6月26日にBが死亡し相続人Dである場合、
@Aの死亡により甲土地はAからBCに移転する権利変動が生じ、
Aその後のBの相続により
甲土地のB持分がDに移転する権利変動が生じており、
甲土地の権利変動は2段階に生じていることになる。

しかし、先例は、
亡Aの第1次相続の相続人Cと相続人Bの地位を包括承継したDとが
第1次相続の相続財産である甲土地について
Bを単独相続させる遺産分割した場合のように
最終の相続以外が「結果として単独相続」であれば、
「3月26日相続B 6月26日相続」の要領で数次の登記原因を併記し、
直接AからDへの移転登記を認めている
(昭30.12.16民甲第2670号民事局長通達)。

この取扱いを中間省略登記と呼ぶか否かは1つの問題であるが
(飛沢隆志「不動産登記先例百選第二版」p54(有斐閣))、
@数次の相続の登記原因が全て併記されて公示の対象とされており、
A亡Aの第1次相続の相続人ではないDを、
亡Aの相続財産の最終帰属者として公示することになるものの、
Dは遺産分割により第1次相続の単独相続人となった
Bの相続人として法的にBと同視できるだけでなく、
Dには所有者として甲土地が自己に帰属していることを
そのプロセスを含めて明らかにすることに利益があるため、
Dを調査することで遡っての権利調査に支障を来さないという評価なのであろう。

この数次相続の問題は、
「形式上」2個の相続が生じた場合の処理であり、
上記(1)(2)のように1個の相続と
それに関連する相続財産帰属の法律関係の処理の場合とは、
異なるものとして観念されてきた。


(4) 第1次相続の財産帰属が第2相続により確定する数次相続の登記処理
事例を元に戻し、甲土地の所有権登記名義人Aが3月26日に死亡し、
その相続人が配偶者B、子Cであり、
その後の6月26日にBが死亡しその相続人がCである場合、
形式上は、(3)のように亡Aの第1相続と亡Bの第2相続の数次相続であり、
@Aの死亡により甲土地がAからBCに移転し、
BCが遺産共有する権利変動が生じ、
Aその後のBの相続により
甲土地がB持分がBからCに移転する権利変動が生じており、
甲土地の権利変動は2段階に生じていることになる。

しかし、亡Aの第1相続の相続財産である甲土地についてみれば、
亡Bの第2相続によりCの単有となり、
遺産分割をするまでもなく、その権利帰属が確定したのであり、
遡及効が無いことを含めて、この権利変動過程は、
上記(2)の相続後のBからCへの相続分の譲渡と同一のものとなる。

形の上では、数次相続であるが、
第2相続が第1相続の相続財産の帰属者を決定する機能を果たしており、
本来、接点を持たないはずの
上記(1)(2)の先例と上記(3)の先例とが接点をもつ事案となっている。

この事案を上記(1)(2)の先例に引きつけて解決するか、
上記(3)の先例に引きつけて解決するのかは、
確かに悩ましい問題といえよう。

しかし、甲土地について、
登記実務における中間省略登記禁止の厳格性を考慮すれば、
Aから甲土地の最終帰属者であるCへの移転登記を認めたところで、
遡っての権利調査に支障を来さないという評価は、
上記(2)の先例と同様に可能である。

他方、上記(3)の先例を「形式適用」し、
それに該当しないことを理由に厳密に2段階の登記を要求したところで、
それにどれ程の実益が認められるかは甚だ疑問と言わざるを得ないし、
先例で培ってきた中間省略登記禁止の厳格性とも整合しないことになる。

結果として、この場合、遺産分割のような「形」を使うまでもなく、
端的に甲土地について
Aから直接にCへの移転登記が可能になると解釈することが、
先例で培った中間省略登記禁止の厳格性に、
より整合する結論となるのではなかろうか。


(5) 遺産分割という「形」を使ってきた理由
とすれば、なぜ、古くから登記実務では、
遺産分割という「形」を使ってきたのかが疑問となる
(高妻新・荒木文明著「全訂 相続における戸籍の見方と登記手続」
p142〜143(日本加除出版)。

ここからは、私の推測を述べたいと思う。

おそらく、ある程度の分量の仕事をこなした者であれば、
登記事務を司る登記官であっても申請を代理する司法書士であっても、
上記(4)の事案は、
甲土地についてAからCへ直接の移転登記ができるものと
「直感」すると思われる。

しかし、本来、別個の事案と意識されている
上記(1)(2)の先例と上記(3)の先例とが例外的に交差する事案であるため、
いずれの先例の「顔もたつ」ように義理立てするとすれば、
上記(3)の数次相続の外形を尊重しつつ、
亡Aの第1次相続の相続人BCのうち
Bの地位を包括承継しその地位を「併有」するCが、
第1次相続をCの単独相続とする
遺産分割決定をすることができると解釈すれば、
上記(1)の先例の適用によって最終以外の相続が単独相続となり、
さらに、上記(3)の数次相続の先例を適用することで、直感したとおり、
ごく自然に既発出の先例と折り合う「形」で、
この事案の解決できることになる。

おそらく全てを分かった上での
登記官と司法書士の阿吽の呼吸とも言うべき
実務上の「知恵」だったのではなかろうか。

このような実務上の知恵は、
坂本龍治司法書士の記事で紹介されていた
実体上の通説が抵当債務の遺産分割に反対する中、
その本質を債権者の保護と解し、
「敢えて」債権者の承諾を得ての債務分割を認め、
遺産分割の遡及効により本来、2個の変更登記が必要となるところ、
相続による債務者の変更登記を
1個により必要最低限の公示を可能とした局面でも見受けられ、
建前だけでは窮屈になりすぎる実務を、
より柔軟に解決する手法の1つであったのであろう。


(6) まとめ
甲土地の所有権が第1次相続の相続人Cの単有に帰属し、
遺産共有が解消すれば、
遺産分割ができないとする立論は、
「条文に忠実な」という意味で「正論」なのかもしれない。

しかし、遺産分割が否定されたところで、
それに代替する「形」は他に幾らでも考えられるため、
正論に拘るのであれば、
既に先例が培っている相続の登記における
中間省略登記禁止の厳格性の考え方を正面から取り上げ、
上記(4)の事案をもはや「形」の問題ではなく、
上記(1)(2)と同様の類型で処理できる事案であるとし、
甲土地についてAからCへの
直接の移転を認めるのが妥当なのではなかろうか。


訴訟戦術の問題とはいえ、
被告側が中間省略の例外として相続分の譲渡の先例を「敢えて」隠し、
裁判所をして、被告の主張した中間省略の例外を規範として
当てはめを行うように誘導する手法は、
被告側を代理する訟務官が
不動産登記事務を分掌する法務省サイドの者だけに、

先例を知らなかったとすれば
「やだー、ありえなーい、だめよ。だめだめ。」だろうし、

知ってやっているとすれば
「えげつな。貴様それでも人間か。」であろうし、

いずれにしても現場で汗を流す登記官のテイストと異なり、
「法務省」という官のテイストは
相当に後味が悪いことだけは確かなようである。

それにつけても、
「正論」の名の下に実務上の「知恵」が葬られるとすれば、
それこそが惜しまれるのであり、
私にとってこの事案は、
つくづく「オツな味のする時代」は終わったのだ
ということを痛感させられるものとなった。

甚だ残念である。


蛭町 浩

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 32
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
根本から考え直してみる・・「中間省略登記禁止の厳格性」:蛭町 浩先生 Next-Stage/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる