Next-Stage

アクセスカウンタ

zoom RSS 論点整理。「債務の遺産分割がなされた場合の登記」について 2:筒井一光先生

<<   作成日時 : 2014/12/24 00:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 17 / トラックバック 1 / コメント 0

承前。

【3 確定前後で根抵当権の何が違うのか】

確定前の根抵当権は,附従性・随伴性を否定し,
被担保債権とは一応独立した価値権として構成されています。

この随伴性否定を明確にした条文が民法398の7であり,
同条2項により,確定前に,被担保債務について債務引受があっても,
根抵当権の債務者は変更しません。
この規定は強行規定です(貞家克己・清水湛著「新根抵当法」p116)。

その反面,確定前は根抵当権者と設定者が合意すれば,
自由に根抵当権の債務者を変更することができます(民398の4)。
つまり,債権関係と物権関係を切離し,
物権の内容である債務者は,
物権の当事者の合意によってのみ変更可能とするのが
確定前の根抵当権です。

では,確定前の根抵当権の債務者に
相続が開始した場合はどうでしょう。

被担保債務は相続人が相続により承継しますが,
債権の変動が物権内容に影響しないという
随伴性否定の性質を強調すれば,
根抵当権の債務者は相続によって
変更されないことになってしまいます。

つまり,普通抵当権の債務者の相続の場合のように,
「債務を相続したから,それを担保する抵当権も相続する」
という構成をとり得ないのが確定前の根抵当権というわけです。

これを根抵当権の側からみると,
相続により承継された債務の債務者は相続人であって,
被相続人ではありませんから,
被担保債務の規格から外れてしまうことになります。

すなわち,相続債務は担保しないことになり,
これは当事者にしてみればかなり不都合です。

そこで,随伴性否定にもかかわらず,
相続開始時に存した債務は担保し続けるよ。
ということを規定したのが,
民法398の8第2項の前段部分です。

当該規定があることで,
債務者の相続により根抵当権の債務者が
相続人に変更される効果を認めることができます。

この規定は,
指定債務者の合意の登記がされた場合だけではなく,
合意の登記がされない結果,
相続開始時に遡及して
確定がみなされた根抵当権についても適用される
と考えられます。

確かに,民法398条の8第4項の遡及効を強調すれば,
6か月以内に合意の登記がされなかったときには,
根抵当権は相続開始時,既に確定していたことになるから,
普通抵当権同様,
債務承継に随伴して根抵当権の債務者も変更するのだ
(=民398の8第2項による承継ではない。)
と説明することも可能かもしれません。

しかし,一旦は,第2項の局面とならない限り,
第4項の遡及効が発生する局面になりませんし,
第2項は「元本の確定前に」相続が開始した場合について規定し,
第4項の適用があった場合を排除していません。

さらに,6か月経過後に適用法条が変わる,
又ははじめて決まるということでは,
6か月経過前の状態を説明することが
著しく困難になるのではないでしょうか。

立法担当者も
「相続開始後合意前の状態というのは,
やはり根抵当権は確定しない状態でなお存続している。
確定しない根抵当権ということでずっと続いているのだけれども,
結局六か月たって合意ができなかった結果,
さかのぼって確定してしまうにすぎない
という説明になるのじゃないかということなんです。」
(商事法務研究会「新根抵当法の解説」
p165;根抵当権者の相続に関して清水湛発言)
と,第4項適用の有無に関わらず,
随伴承継の否定を示唆しています。

これに対して,
既に元本が確定している状態の
根抵当権の債務者に相続が開始したときは,
附従性・随伴性を回復していますから,
普通抵当権と同様に
「債務を相続したから,それを担保する根抵当権も相続する」
という構成をとることができます。

つまり,確定の前後で何が違うかといえば,
民法398の7及び398の8の適用の有無であり,
特に後者については,
6か月経過後ではなく,
相続開始時における確定前後によって
その適用の有無が決まるということです。

【4 債務者の地位の相続と遺産分割】

確定前の根抵当権は独立した価値権として構成されていますので,
被担保債務と別に,債務者の地位自体が相続の対象となるか,
さらに,これを遺産分割の対象にできるかという問題があります。

まず前者に関して,
「根抵当権における債務者の地位そのものは相続の対象とはならない」
とする見解もありますが
(「登記情報」452号p28南敏文「根抵当権の被担保債権の債務引受について」),
立法担当者は,
「極めて不安定な,したがってまた,
結果的にみると相続の対象足るべき財産権性の
極めて弱いものといわなければならないが,
相続開始の時点においては,
根抵当権者の地位はともかく相続の対象となっているといいうる」
(根抵当権者の相続に関し貞家克己・清水湛著「新根抵当法」p136)

「根抵当権について相続があった場合と同じように,
観念的には,合意がない限り相続開始時にさかのぼって
相続開始後の債務は担保されないことになるという制約はあるとしても,
相続の開始によって,債務者の地位は
相続人に承継されているとみるのが合理的であろう。」
(債務者の相続に関して上掲書p144)。
と,債務者の地位の相続財産性を肯定する見解を示しています。

根抵当権の債務者は
根抵当権者と設定者のイニシアティブで定められる
根抵当権の被担保債権決定基準にすぎませんので,
債務と別にその地位のみが相続されるなどあり得ない
という考えにも説得力はありますが,
それでは指定債務者の合意がされるまでの状態や
被担保債務が皆無で相続が生じたケースなどを
うまく説明できなくなってしまうので,
一応,債務者の地位の相続財産性を認めるのが妥当でしょう。

そうだとすると,
後者の遺産分割対象財産性が問題になります。

この点に関しては,
「根抵当取引の債務者の地位は遺産分割の対象とはならない。」として
「もともと根抵当権における債務者の定めは,
被担保債権の範囲を画する基準として,
根抵当権者と設定者との間で定められるものであり,
その変更も根抵当権者と設定者の合意のみでできるものである。」
したがって「根抵当権における債務者の地位そのものは,
債務者の相続人によって承継あるいは処分する対象となるものではない。」
という説明がされています(枇杷田泰助監修「根抵当登記実務一問一答」p118)。
妥当だと思います。

共同相続人間における債権的な効果はともかく,
物権的な効果は期待できないでしょう。

立法担当者は少しニュアンスの異なる説明をしていて,
「債務についての遺産分割は原則としてない」
(貞家克己・清水湛著「新根抵当法」p144)
ことを根拠に債務者の地位の遺産分割もできない原則を示唆した上で,
例外的に
「被担保債務が皆無の状態で債務者が死亡したときは,
共同相続人の協議によって,
債務者の地位を承継する相続人を定めることは可能」としています。

上記の説明とは若干整合しない気もしますが,
このケースでは,
根抵当権者及び設定者による合意にまで至らなければ,
結局,根抵当権は消滅してしまいますので,
問題とはならないということでしょう。

以上をまとめると,
確定前の根抵当権の債務者に相続が開始した場合,
被担保債務と別に,債務者の地位は一応相続されるが,
債務者の地位のみを遺産分割の対象とすることは原則としてできない
ということになります。

さらにつづく


筒井一光

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 17
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
驚いた 驚いた

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「−宿題の解答−(前編)」:坂本龍治先生
私がもたもたしているうちに、 筒井先生に助けられる格好となってしまいました。 ...続きを見る
Next-Stage
2015/01/06 00:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
論点整理。「債務の遺産分割がなされた場合の登記」について 2:筒井一光先生 Next-Stage/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる