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zoom RSS 「登記制度の視かた考えかた・・常識を疑うことから始める茨の道」:蛭町浩先生

<<   作成日時 : 2016/11/23 00:20   >>

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一人遺産分割の裁判例は、
司法書士の処理を「法的に無意味」なものと
「バッサリ」と切り捨てるものであり、
わたくし的には非常に「ショッキング」な内容であった。
 
このままでは、いかにも司法書士が
「法に無知」の印象となるだけでなく、
そこまで言われて一言も反論できないというのは、
負けず嫌いの(大人げない)私には耐えられず、
当初はこの裁判例に対して何とか反論ができないものかと考えた。

しかし、頭を冷やしてよくよくこの現象を考えるうち、
登記制度について多くの方に共通する
常識と呼べるような知識や考え方が確立しておらず、
登記制度についての問題意識が共有されていないことこそが、
この問題の「本質」ではないかと思えるようになった。

例えば、近年、相続登記の長期放置が
空き家問題などの社会問題が生じさせている。

民法は、民法177条に登記が権利変動の対抗要件であることを規定し、
対抗力の取得を動機として登記の申請を促進し、
公示の原則が充たされるような登記制度を構築している。

判例は、法定相続による権利変動は、
登記なくしてそれを第三者に対抗できると解釈し(最判昭38.2.22)、
戦前の隠居制度を前提とする
相続登記要求連合部判決(大連判明41.12.15)を変更している。

この判例変更の論理的な帰結は、
法定相続は対抗力の取得を動機として
登記を申請することが期待できなくなったということである。

既にこの時点から
法定相続登記が申請されず放置されることを
当然に予想しておかなければならなくなったのである。

この問題は民法の問題であるため、
当事者が登録免許税を負担してもなお登記の申請をするよう誘導するには、
ありとあらゆる民法の解釈技術を駆使して当事者の負担感を軽減するか、
上記の民法の制度を根本から見直すかのいずれかの対応が必要となる。

忘れてならないことは、
制度の発足当初から登記は登録免許税という
国税を納付しなければすることができないものだという点である。

これを下世話に換言すれば、
「対抗力は、お金(税金)で買っている」のである。

一方の口で当事者に登記なしに(お金を払わすに)
第三者への対抗ができると語りかけながら、
他方の口で当事者の共同相続登記の懈怠(お金の不払いを)責めるのは、
明らかに矛盾である。

その論法の正当性を一般の方々に説得し、
納得を得ることは不可能であろう。

まして、近年の経済合理を基調とする国民意識の下では、なおさらである。

上記の判例、民法や登録免許税の枠組みを維持するのであれば、
潔く中間の権利変動過程に過ぎない
法定相続登記の確保を諦めるしか途はない。

他方、権利変動そのものを登記すべしとする
登記制度の理想を説くのであれば、
上記の判例、民法や登録免許税の枠組みを変更するしかない。

いずれの要請も共に満足させる解決策を考えるとすれば、
それは体のいい問題解決の先送りとなる。

この問題は時間経過によりますます法律関係を複雑化させるため、
そのような取組は将来に向けて大きな禍根を残すだけの話となる。

少なくとも矛盾を孕んでしまっている
法定相続登記の確保などという無責任な話には
乗ることができないことだけは、はっきりしている。

それができるぐらいなら
上記の社会問題など起きていないはずだからである。

このように、公示の原則を実現するために
登記を促進する民法上の制度は、
相続登記の局面では、
皮肉なことに判例によって破綻し機能していない。

この問題を含め登記制度の問題を解決するには、
多くの方と問題意識を共有できなければならない。

そのためには
共通する「議論の土台」となる登記制度の常識といえる
知識や考えかたを確立することが必要となる。

この作業を一体誰が行うべきなのか。

司法書士は、
権利に関する登記の専門家として自他共に認める存在である。

とすれば、専門家を自負する司法書士が、
自らの「誇り」を賭けて、強烈な「当事者意識」を持って、
この作業に取り組まなければならないことになる。

特に、近年の合格者は、潜在的な能力が高く、
それを担う人材として大いに期待できると私は確信している。

しかし、その作業を行うには、
試験に合格した程度の知識だけでは十分ではない。

この作業は、これまで常識とされてきたものを全て疑い、
その内容をいちいち検証してみることが必要となるからである。

また、議論すべき相手方は、
日頃登記を扱う同職や土地家屋調査士、登記所の方々だけでなく、
登記制度に関心をよせる法曹や
登記制度を専門に研究されている研究者の方々も含まれるからである。

私自身を含めて、そのような作業をするためには、
我々は登記制度を知らなさすぎるというのが
嘘偽りのない本音なのである。

そこで、ささやかながら司法書士自らが
新たに登記制度の常識となる知識や考えかたを確立するために
参考となる資料や考えかたを提供するために上梓したのが
「登記制度の視かた考えかた」(弘文堂)である。

この本は、小坂宜也氏(剣道錬士六段、初代編集長)が
開設した当ブログの初期メンバーである
司法書士正橋史人、司法書士皆川雅俊(二代目編集長)、
伊藤塾講師筒井一光と私が分担執筆したものである。

いわば「Next・Stage」の「Next・Stage」を示すつもりの本である。

世の中に優れた実務本は数多く存在する。

しかし、本書のような趣旨の本は
通常、商業ベースに乗らないため、
これを市販本の形で出版できたことが
我々執筆者の密かな「誇り」であり、
我々の「意地」なのだ。

おそらく今後、
類似の市販本が出版されることは絶無であろう。

上記の本には、
登記所の方々や研究者・法曹の方々が
一堂に会する議論の場でも
臆することなく、自らの見解を述べるために
最低限、押さえて置かなければならない知識や考えかたを
詰め込んでいるつもりである。

それがどのようなものなのか。

是非とも書店で手にとって眺めて頂きたい。

経済合理が支配し、閉塞感の漂う今の世の中を、
ただ手をこまねいて見ていることは一般の人ならば許される。

しかし、「選ばれし者」にとってそれは無責任な態度となる。

「義をみてせざるは勇なきなり」、
蛮勇をふるって行動しようとする者と共に杯を交わし、
酔えば酔うほどに熱い議論をするのが、わたくしの「夢」である。


蛭町 浩

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