会社法施行日である平成18年5月1日に監査役が退任する場合とは

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平成18年、平成19年の本試験の記述式試験を見る限りではなるべく、会社法整備法の規定を出題しないようにしているようですが、
表題の件については、よく質問がある部分ですので、お答えしておきます。

【結論】

次の2つの場合の会社法施行時点で当該会社の監査役は退任します(退任しています)。

(1)会社法施行時点で、①株式譲渡制限規定がない会社で(公開会社)、②資本の額が1億円以下である会社 

(2)会社法施行時点で、①譲渡制限規定がある会社(非公開会社)だが、②会社法施行前に、資本金が1億円以上になった会社(「小会社特例規定は適用されていたが、施行時点で現に小会社ではない会社)

一方、
(3)会社法施行時点で、①株式譲渡制限規定がある会社で、②資本の額が1億円以下である会社 
(4)会社法施行前に、そもそも資本金が1臆円を超えていて、監査役の業務権限が制限されていなかった場合
は、監査役は退任していません。

【解説】
 会社法施行以前は、
①資本金1億円以下の会社は、監査役の権限が会計監査に限定され(「小会社」と呼ばれていた)
②資本金1億円を超える会社は、監査役の権限が会計監査+業務監査権限を有していました(「中会社・大会社」と呼ばれていた)
これは、法定の規定であり、定款で別段の定めを定めることは許されていませんでした。

この監査役の権限限定のは、会社法においては、
①原則として、すべての監査役が会計監査・業務監査を有していることになり
②例外として、非公開会社であれば、定款で監査役の監査権限を会計に関するものに限定できることとなった
(会社法389条・でも会計監査人や監査役会を設置してたらダメです)

しかし、いきなりすべての1億円以下の会社の監査役の権限が拡張したら困るので、会社法の整備法の53条において、監査役の権限が限定されている会社の権限が拡張しないように、整備法で経過規定を定めています。


(監査役の権限の範囲に関する経過措置)
第53条  旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第1条の2第2項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第66条第1項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす。


とはいっても、この条文でもカバーできない範囲というものが出てきてしまいます。
それが、

(1)会社法施行時点で、①株式譲渡制限規定がない会社で、②資本の額が1億円以下である会社 

(2)会社法施行時点で、①譲渡制限規定がある会社でも②会社法施行前に、資本金が1億円以上になった会社(現に小会社ではない会社)

です。

(1)の理由は、会社法では公開会社では、監査役の権限を会計限定とする定款の定めを定めることはできないからです。

(2)の理由は、整備法53条の規定は、会社法施行時点で「現に」資本金の額が1億円以下の会社のみしか適用されず、(2)の会社は、整備法53条の規定が適用されないこととなり、定款に会社法389条のみなし規定がつかず、監査役の監査権限が拡張することになるからです。


これらの会社の監査役は、業務権限が拡張するため、会社法施行時点である平成18年5月1日時点で退任します。そもそも、権限を会計に限定しているものとして選んだ監査役なので、一度退任させて、
改めて、業務監査権限まで有していることを前提とした監査役を選びなおす必要があるからです。

一方、
(3)会社法施行時点で、①株式譲渡制限規定がある会社で、②資本の額が1億円以下である会社 は、整備法53条の規定が適用され、定款に会計限定の定めがあることとなるため、監査役の会計権限は拡張せず、監査役は退任しませんし、

(4)会社法施行前に、そもそも資本金が1臆円を超えていて、監査役の業務権限が制限されていなかった場合は、そもそも何の問題もありません。



上記のように、本試験の記述式で問われる可能性は高くありませんが、気になる方は結論を覚えておきましょう。
個人的にはBランクの知識かなと感じます。

                              正橋 史人

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この記事へのコメント

そら
2008年05月10日 09:50
ページを見ては、気をとりなおす毎日です。
ねこは、自然体でいいですね~
家のねこも、こんなです。
ついでに見る!?写真がとても楽しみです。

昔の記事ですが。。。
2016年10月26日 12:12
(2)会社法施行時点で、①譲渡制限規定がある会社でも②会社法施行前に、資本金が1億円以上になった会社(現に小会社ではない会社)
です。


(1)のほうは理解できたのですが、(2)がよくわかりません。
もしよろしければ追加解説希望です。
正橋史人
2016年10月27日 18:28
いまいちわからない箇所がわからないのですが、
一応解説します。

(2)の監査役は元々、小会社の監査役は会計限定監査役として選んでいる監査役です
(小会社(資本金1億円以下の会社)の監査役はすべからく会計限定だったのであり、定款で定めるとかそういう話ではない。)。

しかし、新法の下においては「原則 業務監査、会計限定」であり、
定款で、会計限定と定めて初めて「会計限定」の監査役となります。

比較対象として、(3)の会社は、整備法の規定が適用される会社であるので、
定款に会計限定の規定の存在がみなされるので、
権限の範囲は変わらず、退任とはなりません。

しかし、(2)の会社は、整備法53条の規定の範囲外ですので、
定款に会計限定の規定がみなされません。
つまり、その会社の監査役は「会計限定」であった監査役が
新法施行と同時に「業務監査、会計限定」に権限が拡張されるのです。
そもそも、「会計限定」として選んでいた監査役ですので、
権限が拡張する場合、その権限に合った者として選任しなおさなければなりません。

したがって、新法施行時に(あらたに業務権限ある監査役を選任するために)従来の監査役を退任させることになるのです。
2016年10月28日 13:29
まず、商法特例法下における小会社(1億円以下の会社)は(定款の規定など関係なしに)すべからく会計限定監査役であり、それを前提として選任されたものということになります。

一方、新法では「原則 会計監査権限+業務監査権限」とされ、「会計監査権限のみ」とするには定款の規定が必要です。

比較として本文(3)の会社は、元は「会計監査権限のみ」の監査役であり、また、整備法53条の規定が適用され、
新法施行時点で定款に「監査役の権限は会計監査に限定する」という規定があるものとみなされる会社なので、
その前後で権限に変更がなく、監査役は退任しません。

しかし(2)の会社は、整備法53条の規定の対象に含まれる会社ではないので、
新法施行時点で定款に「監査役の権限は会計監査に限定する」という規定があるものとみなされません。

すると、新法施行時点で「会計監査権限のみ」から、「会計監査権限+業務監査権限」へ、
その会社の監査役の権限が拡張することになります(それが会社法の原則だから)。

すると、もともと「会計監査権限のみ」として(狭い権限で)選任した監査役は、今後の業務を行うためには
不適格であり、「会計監査権限+業務監査権限」という権限のある監査役として選びなおす必要があります。

したがって、新法施行時点で(今後「会計監査権限+業務監査権限」のある監査役を選ぶために)
従前の監査役は退任させる必要があるのです。

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