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zoom RSS 奥深き。「債務の遺産分割がなされた場合の登記」について(後編):坂本龍治先生

<<   作成日時 : 2014/11/05 00:00   >>

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−A根抵当権の場合にはどのように登記すべきか?−


根抵当権の場合には、
元本の確定前後で分けて論ずる必要があります。


根抵当権の元本が確定する前であれば、
指定債務者の合意の登記を申請する前件として、
指定債務者となり得る相続人を登記しなければならないという特殊性から、
債務の遺産分割がなされていたとしても、
既発生債務を相続しないが指定債務者となり得る相続人を含めて
登記しなければなりません。


また、債務と共に債務者たる地位をひとりに集約した場合はどうか?
を検討してみても、
債務者たる地位を遺産分割すること自体、
債務が分割承継されることとの関係で、
これを否定する見解が通説となっていますから、
やはり遺産分割によって
1つ目の登記が影響を受けることはないと言えるでしょう。


大問題なのが、根抵当権の元本が確定している場合です。
根抵当権の唯一の債務者Aが死亡し、BCが相続人である場合に、
相続開始後6か月を過ぎても何ら根抵当権の登記をしていなかった場合を
考えてみて下さい。
その後に、BC間で遺産分割がなされ、Bが債務を承継したような事例です
(債権者の承諾は得られています)。


根抵当権は、
相続開始時に確定したものとみなされます(民法398の8第4項)。
これにより、根抵当権の性質は抵当権に近づき、
確定前には妥当しなかった抵当権上の理論が根抵当権に妥当する、
ということが起き得ます。


では、昭和33年先例は?妥当するのでしょうか。
この点「事項別 不動産登記のQ&A200選 6訂版」
(日本法令 不動産登記研究会編)では、
「共同相続人の一人のみが遺産分割により
債権者の承諾を得て債務を引き受けたとしても、
抵当権のようにいきなり
相続人の一人のみへの変更登記はできないと解します。」
と記述されており、
昭和33年先例の適用を廃除しています(Q138:261頁〜)。


しかし、本当にこの結論が正しいのでしょうか?


債務の遺産分割を可能と解することを前提とすれば、
抵当権と同等の登記の運びが可能となっても良いように思います。


たとえば、
@ 相続による根抵当債務者の変更登記(変更後の債務者 BC)
A 元本確定登記(この登記は任意)
B 遺産分割による根抵当債務者の変更登記(変更後の債務者 B)
といった登記の運びはできないでしょうか。


@で相続を原因とする変更登記をしておきながら、
Bで遺産分割による変更登記を申請するというのは、いかにもおかしい、
という意見も聞かれそうですが、
所有権に関する登記の場合には、既に共同相続登記がなされていた場合、
「年月日遺産分割」を原因とする移転登記の申請を許容しています。


藤原勇喜先生の「体系不動産登記」においても、
「相続人全員の債務者変更の登記をした後、
遺産分割の協議又は審判により、
 相続人の一部が債務を引き受けた場合は、
登記原因は「遺産分割」となる」
と記述されており(1556頁)、
前述した登記の運びもひとつの考え方として成り立ちうるように思います。
(私自身は、これによるのが最も良いと考えています。)


また、上記の考えに不備があったとしても、
「Q&A200選」のとる帰結によるべきではないと思います。
なぜなら、登記研究553号の「登記簿」に、
次のような記述がなされているからです。

「A:それでは、元本の確定した根抵当権の債務者が死亡し、
債務者について相続が開始した場合、
その債務もいったん相続人全員が承継することとなるが、
遺産分割の協議により相続人の一人が債権者の同意を得て、
当該確定債務を引き受けた場合には、普通抵当権と同様に、
直接当該相続人の一人への債務承継(相続)による
根抵当権の変更登記をすることができるかな。
B:可能であると思います。
A:昭和33年先例に照らして、そう解して差し支えないでしょう。」


ここでは、具体的な登記の運びまで明確に記されてはいませんが、
「Q&A200選」のとる帰結に対する強力な反論材料にはなると思います。


実務的にも非常に微妙な事例ですが、
たまには思考の針路を奥深くへと向けてみるのも良いものです。


坂本龍治

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