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zoom RSS 論点整理。「債務の遺産分割がなされた場合の登記」について 1:筒井一光先生

<<   作成日時 : 2014/12/23 00:00   >>

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「根抵当権の債務者につき共同相続が開始した場合において,
相続を原因として直接遺産分割協議で定めた
特定の相続人のみを債務者とする登記はできないか。」

1月ほど前の坂本先生の記事
http://next-stage.at.webry.info/201411/article_2.html
に関連してですが,
私自身,受験生時代に疑問を持っていた点であり,
毎年のように,受験生から質問を受ける点でもあります。

実務上も,結果的に債務者が1人になるときに
一旦共同相続人全員を債務者とする登記をパスできれば,
申請件数を1件減らせますから,大きなニーズがあるのは確かです。

この問題については,坂本先生から「宿題」という形で
問題提起がされましたが,
気になって眠れないという受験生がいるといけませんので,
師も走る月で多忙な坂本先生に代わって,
僭越ですが,私の方から,若干の論点整理といいますか,
補足説明をさせて頂きたいと思います。

【1 結論】

私の調査の限りでは,
「既に元本確定後の根抵当権の
債務者に相続が開始した場合を除き,
根抵当権では,相続を原因として直接
遺産分割協議で定めた特定の相続人のみを債務者とする登記は
原則としてできない」
というのが,根抵当法の立法担当者の見解であり,
登記実務を所管する法務省民事局の見解であるようです。

元本確定の前後で取扱いが異なるというのは
坂本先生の説明のとおりですが,
『遺産分割の時点ではなく,「相続開始時点」を基準にして,
確定の前後を見る』というのがポイントです。

すなわち,「既に確定後の根抵当権」の
債務者に相続が開始したときは,
普通抵当権に関する
昭和33年5月10日民事甲第964号民事局長心得通達
を適用して,
遺産分割協議で定めた特定の相続人のみを債務者とする
相続を原因とする変更登記をすることができますが,
「確定前の根抵当権」の債務者に相続が開始したケースでは,
その後,指定債務者の合意の登記がされようと,
合意の登記がされず相続開始時に
確定したものとみなされる結果になろうと,
昭和33年先例の適用は認められないということです。

以下,この結論に関する考察を試みますが,
かの登記研究誌上でも
「理論的に説明しきれないが,」
「理由付けはともかくとして,結論的に実務の取扱いは妥当と考える。」
(登研553登記簿)
なんて,説明といえない説明をしているくらいですので,
非常に難しい。
試験対策上の重要度はそれほど高くないと思います。

なので,結論さえわかれば枕を高くして眠れるという受験生の方は
下の気持ち玉を押してお帰りいただいて構いません(笑)。

以下は,
奥深き根抵当権についての頭の体操に興味がある方,
「なんでだー。納得できないぞー。」という方,
また,そうしたお客様に説明の必要があり得る
実務家の皆様方に向けて書きます。

大いに私見が混入しますが,しばしおつきあいください。

【2 昭和33年先例の解釈】

議論の出発点となる昭和33年先例要旨については
11/4付坂本先生の記事をご参照ください
http://next-stage.at.webry.info/201411/article_2.html

この先例を読む際,注目すべきは,
回答原文・要旨・解説を通して
「債務の遺産分割はできる」とまでは断言していないところです。

「遺産分割の協議により債権者の承諾を得て債務を引受けた」
といった具合で,どちらかといえば
債務引受に重心を置いた言い回しになっています。

これは,登記実務が
「債務の遺産分割は不可」という
通説・判例を否定しているわけではない
と読むべきでしょう。

つまり,通説・判例の見解を一応認めたとしても,
債務分割の実質を債務引受と理解すれば,
債権者の同意・承諾がある限り,
これを否定する必要はないと考えられます。

そうであれば,遺産分割の遡及効を利用できるから,
債務引受が遺産分割の範疇でされていると認められる限り
直接,債務を引受けた相続人のみを
債務者とする登記を認めても差し支えないだろう。
ということができます。

すなわち,昭和33年先例は,
申請人や登記官の事務処理の手間等を考慮した,
飽くまで登記手続上の,
便宜的な取扱いといえるのではないでしょうか。

「債務分割の実質は債務引受である。」
「昭和33年先例は遺産分割の遡及効を利用して
登記手続を簡略化するための便宜的取扱いである。」
この2点がポイントです。

ところで,普通抵当権では
被担保債務について債務引受があると
なぜ債務引受を原因とする変更登記ができるのでしょう。

「そんなの基本です。
普通抵当権は被担保債権に対する附従性・随伴性があるから,
債務引受で被担保債権の債務者が変更されれば,
それに随伴して
登記事項である債務者も当然に変更されることになるからです。」

そのとおり。

勘のいい方は,もうお分かりと思いますが,
この「附従性・随伴性」が
根抵当権についての昭和33年先例適用を考える際の
キーワードになります。

つづく


筒井一光


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